労働衛生コンサルタント試験とは
事業場の労働衛生水準を高め、労働者の健康障害を防止するために、診断や指導を行う専門家を認定する国家試験です。労働衛生コンサルタントは、厚生労働大臣が認める労働衛生分野の専門資格で、作業環境、化学物質、粉じん、騒音、衛生管理体制などに関する助言や改善指導に関わります。
試験は筆記試験と口述試験で構成されています。筆記試験では、労働衛生一般、労働衛生関係法令、健康管理、労働衛生工学などの区分に応じた専門知識が問われます。筆記試験に合格すると口述試験に進み、労働衛生コンサルタントとして必要な知識、判断力、説明力、実務への対応力などが評価されます。
製造業、化学工場、建設業、医療・研究機関、労働衛生コンサルタント事務所、企業の安全衛生部門などで活用しやすい資格です。受験には実務経験などの要件があるため、初学者向けというより、労働衛生管理や作業環境改善に関わる実務経験者が専門性を高めるために向いています。
労働衛生コンサルタント試験の基本情報
| 資格種別 | 国家資格(名称独占資格) |
| ジャンル | 保安・技術 |
| 資格区分 | なし |
| 受験資格 | 学歴、保有資格、労働衛生に関する実務経験などにより異なる。医師、歯科医師、薬剤師、保健師、技術士、衛生管理者、作業環境測定士などの有資格者や、所定の実務経験者などが対象 |
| 試験日程 | 年1回。筆記試験は例年10月ごろ、口述試験は翌年1月ごろに実施 |
| 試験方法 | 筆記試験と口述試験で実施。筆記試験は択一式と記述式、口述試験は面接形式で実施 |
| 免除科目 | 医師、歯科医師、薬剤師、技術士、衛生管理者、作業環境測定士などの保有資格や実務経験により、一部科目または筆記試験の全部が免除される場合があります |
| 試験場所 | 筆記試験は北海道、宮城県、千葉県、東京都、愛知県、大阪府、広島県、福岡県など。口述試験は東京・大阪で実施 |
| 受験料 | 24,700円 |
| 登録・更新 | 試験合格後、厚生労働省の労働衛生コンサルタント名簿に登録を受けることで、労働衛生コンサルタントとして活動できます |
| 問い合わせ | 公益財団法人 安全衛生技術試験協会 |
| 関連資格 | 労働安全コンサルタント 労働者派遣契約責任者検定 経営管理士 |
労働衛生コンサルタント試験の試験日
2026年度試験
| 試験日 | 申込期間 | 合格発表 |
|---|---|---|
| 筆記試験:10月20日 | 7月1日~7月31日 | 筆記試験:12月上旬予定 |
| 口述試験:1月13日~1月14日、1月26日~1月29日 | 筆記試験全免除者のみ:11月1日~11月15日 | 最終:2月下旬予定 |
労働衛生コンサルタント試験の試験内容
保健衛生、労働衛生工学の2区分に分かれており、いずれか1区分を選択して受験します。試験は筆記試験と口述試験で構成されています。
筆記試験では、労働衛生一般、労働衛生関係法令、選択した区分ごとの専門科目が出題されます。口述試験では、労働衛生コンサルタントとして必要な専門知識、実務経験、作業環境や健康障害防止に関する助言・指導能力などが確認されます。
有害物質、粉じん、騒音、振動、暑熱、放射線、化学物質管理、作業環境測定、健康管理、労働衛生管理体制など、職場の健康障害を防止するための知識と判断力が問われます。
出題範囲
保健衛生
労働者の健康管理、職業性疾病、産業医学、健康診断、メンタルヘルス、過重労働、作業関連疾患、感染症対策などが出題されます。
職場における健康障害の予防、健康診断結果の活用、作業環境や作業条件と健康影響の関係、産業医や衛生管理者との連携など、医学・保健衛生の視点から労働衛生を考える内容です。
労働衛生工学
作業環境管理、作業環境測定、局所排気装置、全体換気、粉じん、有機溶剤、特定化学物質、鉛、騒音、振動、暑熱、放射線などが出題されます。
有害要因を測定・評価し、工学的な対策によってばく露を低減するための知識が中心です。換気設備、密閉化、発散源対策、保護具、測定結果の評価、作業環境改善に関する内容が問われます。
労働衛生一般
労働衛生管理体制、作業環境管理、作業管理、健康管理、労働衛生教育、リスクアセスメント、職業性疾病、化学物質管理などが出題されます。
特定の専門区分に限らず、事業場全体の労働衛生管理に必要な共通知識が問われます。
労働衛生関係法令
労働安全衛生法、労働安全衛生規則、有機溶剤中毒予防規則、特定化学物質障害予防規則、粉じん障害防止規則、鉛中毒予防規則、電離放射線障害防止規則、石綿障害予防規則などが出題されます。
事業者の義務、作業主任者、特殊健康診断、作業環境測定、局所排気装置、保護具、教育、記録、掲示、管理濃度など、健康障害防止に関する法令上の基準を理解しているかが確認されます。
口述試験
筆記試験合格者または筆記試験の全部免除者を対象に実施されます。
受験区分に関する専門知識、労働衛生上の課題に対する判断、実務経験、事業場への助言・指導の考え方などが問われます。労働衛生コンサルタントとして、現場の状況を把握し、適切な改善策を示せるかが確認されます。
試験科目と出題数
筆記試験は、労働衛生一般、労働衛生関係法令、選択区分ごとの専門科目で構成されます。
労働衛生一般は択一式30問、労働衛生関係法令は択一式15問です。専門科目は、保健衛生または労働衛生工学のいずれかを選択して受験します。
筆記試験に合格した人、または筆記試験の全部免除者を対象に、口述試験が実施されます。口述試験では、選択区分に関する専門知識や、労働衛生コンサルタントとしての実務的な対応力が確認されます。
合格基準
筆記試験は、総得点のおおむね60%以上が合格基準です。ただし、1科目でも満点の40%未満の科目がある場合は不合格になります。
口述試験は4段階評価で行われ、上位2ランクに該当することが合格基準です。口述試験に合格すると、最終合格となります。
労働衛生コンサルタント試験の受験者数・合格率
筆記試験
| 年度 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
|---|---|---|---|
| 2025年度 | 943人 | 229人 | 24.3% |
| 2024年度 | 858人 | 232人 | 27.0% |
| 2023年度 | 749人 | 318人 | 42.5% |
| 2022年度 | 608人 | 202人 | 33.2% |
| 2021年度 | 524人 | 176人 | 33.6% |
口述試験
| 年度 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
|---|---|---|---|
| 2025年度 | 628人 | 284人 | 45.2% |
| 2024年度 | 566人 | 284人 | 50.2% |
| 2023年度 | 523人 | 250人 | 47.8% |
| 2022年度 | 361人 | 190人 | 52.6% |
| 2021年度 | 327人 | 203人 | 62.1% |
最終合格率
| 年度 | 最終合格率 |
|---|---|
| 2025年度 | 21.0% |
| 2024年度 | 23.5% |
| 2023年度 | 26.2% |
| 2022年度 | 24.8% |
| 2021年度 | 30.1% |
労働衛生コンサルタント試験の難易度
労働安全衛生法令、作業環境管理、作業管理、健康管理、有害化学物質、粉じん、騒音、振動、暑熱、放射線、メンタルヘルスなど、職場の衛生管理に関する幅広い知識が必要になります。産業医、衛生管理者、作業環境測定士などの経験がある人でも、試験では自分の専門外の分野まで問われるため、知識の偏りがあると難しく感じやすいでしょう。
特に重要になるのは、職場で起こる健康障害をどのように防ぐかを考える力です。有害要因を把握し、作業環境測定や保護具、換気、作業方法の改善、健康診断、教育などを組み合わせて判断する必要があります。単に用語や基準値を覚えるだけではなく、実際の職場でどのような対策が必要になるかを理解しておくことが求められます。
また、口述試験がある点も大きな負担になります。知識を持っているだけでなく、質問に対して専門家として分かりやすく説明できる力が必要です。実務経験が豊富な人でも、法令・医学・化学物質・作業環境管理を整理して話せないと、苦労しやすい試験です。
産業保健、労働衛生管理、作業環境測定、化学物質管理、製造業や建設業の安全衛生部門に関わっている人は、実務経験を活かしやすい資格です。一方で、労働衛生分野に触れた経験が少ない人にとっては、医学的知識、法令、測定、職場改善の考え方を広く学ぶ必要があり、取得ハードルは高めです。
資格を活かせる仕事
労働衛生コンサルタント事務所、製造業、化学工場、建設業、医療・研究機関、作業環境測定機関、労働安全衛生コンサルティング会社、企業の安全衛生部門、産業保健関連の業務などがあります。特に、職場の衛生診断、作業環境の改善、有害物質対策、健康障害の予防、労働衛生教育、リスクアセスメント、法令に基づく衛生管理体制の整備などに関わる仕事では、資格で学んだ知識を活かしやすいでしょう。
労働衛生の分野では、事故や病気が起きてから対応するのではなく、職場環境を整えて健康障害を未然に防ぐ視点が重要です。化学物質のばく露、粉じん、騒音、暑さ、長時間労働など、職場ごとのリスクを見極め、具体的な改善策を提案できる人材は、製造業や建設業、研究施設などで評価されやすくなります。
この資格は、労働衛生・産業保健分野では専門性が高い資格です。すでに衛生管理、安全衛生、作業環境測定、産業保健に携わっている人が取得すると、社内評価やコンサルティング業務への展開に活かしやすくなります。
一方で、労働衛生コンサルタントだけで未経験から専門職として活躍するのは簡単ではありません。実務では、職場巡視、作業環境測定、健康管理、化学物質管理、労働安全衛生法への理解、関係者への説明力なども重視されます。
労働衛生コンサルタント試験は、職場の健康管理や作業環境改善に関わりたい人に向いています。衛生管理者、作業環境測定士、労働安全コンサルタント、環境計量士、公害防止管理者、産業保健関連の実務経験と組み合わせることで、労働衛生・安全衛生分野でより活かしやすくなるでしょう。

