一級建築士試験とは
一級建築士試験は、建築物の設計や工事監理を行う一級建築士になるために必要な国家試験です。一級建築士は、住宅だけでなく、大規模な建築物や複雑な構造の建築物にも関わることができる建築分野の代表的な資格で、建築士資格の中でも最上位に位置づけられます。
試験は「学科の試験」と「設計製図の試験」に分かれており、学科では計画、環境・設備、法規、構造、施工など、建築に関する幅広い知識が問われます。設計製図では、与えられた条件に基づいて建築物を計画し、図面としてまとめる実践的な力が評価されます。
建築設計事務所、建設会社、住宅メーカー、不動産会社、官公庁など、建築に関わる幅広い分野で評価される資格です。取得には試験合格だけでなく、免許登録のための実務経験も必要になるため、建築分野で専門性を高め、設計や工事監理の責任ある立場を目指す人に向いています。
一級建築士試験の基本情報
| 資格種別 | 国家資格(業務独占資格) |
| ジャンル | 建築・不動産 |
| 資格区分 | なし |
| 受験資格 | 大学・短期大学・高等専門学校・専修学校などで建築に関する指定科目を修めて卒業した人、二級建築士、建築設備士、その他国土交通大臣が特に認める人など。実務経験は、試験合格後の免許登録時に審査されます。 |
| 試験日程 | 年1回。学科の試験と設計製図の試験に分けて実施。 |
| 試験方法 | 学科の試験は筆記試験で、計画・環境設備・法規・構造・施工の5科目。設計製図の試験は、課題に基づいて設計図書を作成する実技形式。 |
| 免除科目 | 学科の試験に合格した人は、一定期間、本人の申請により学科の試験が免除 |
| 試験場所 | 全国の指定試験地 |
| 受験料 | 17,000円(非課税)。別途、ネット決済手数料が必要。 |
| 登録・更新 | 験合格後、一級建築士として業務を行うには、国土交通大臣の免許登録が必要。建築士事務所に所属する建築士は、原則として定期講習の受講が必要 |
| 問い合わせ | 公益財団法人 建築技術教育普及センター |
| 関連資格 | 二級建築士 木造建築士 建築設備士 宅建士 |
一級建築士試験の試験日
2026年度試験
| 試験日 | 申込期間 | 合格発表 |
|---|---|---|
| 学科:7月26日(日) 設計製図:10月11日(日) | 4月1日~4月14日 | 学科:9月2日 設計製図:12月23日 |
一級建築士試験の試験内容
学科の試験と設計製図の試験で構成されています。学科の試験に合格した人が、設計製図の試験を受験できます。
設計製図の試験では、事前に公表される設計課題に対して、試験時間内に要求条件を読み取り、建築物の設計図書を作成する力が問われます。学科の試験では、建築計画、建築環境・設備、建築法規、建築構造、建築施工の5科目が出題されます。
出題範囲
設計製図の試験
建築物の計画、動線、ゾーニング、構造、設備、法規、敷地条件、周辺環境などを踏まえ、課題条件に沿った設計図書を作成します。
要求室、面積、階構成、避難経路、バリアフリー、構造計画、設備計画、法規上の制限などを総合的に整理し、図面として表現できる力が必要です。
学科Ⅰ 建築計画
建築史、各種建築物の計画、住宅・公共建築・商業施設などの設計計画、都市計画、建築計画に関する基礎知識が問われます。
学科Ⅱ 建築環境・設備
日照、採光、換気、音響、熱、空気環境などの建築環境と、空調、給排水、電気、照明、防災設備などの建築設備が出題されます。
学科Ⅲ 建築法規
建築基準法、建築士法、消防法、都市計画法、バリアフリー法など、建築に関係する法令が問われます。法令集を使いながら、条文を正確に読み取る力が必要です。
学科Ⅳ 建築構造
構造力学、荷重、鉄筋コンクリート構造、鉄骨構造、木造、基礎構造、耐震設計、構造計算に関する知識が問われます。
学科Ⅴ 建築施工
施工計画、品質管理、安全管理、工程管理、仮設工事、土工事、鉄筋工事、型枠工事、コンクリート工事、鉄骨工事、仕上げ工事などが出題されます。
試験科目と出題数
設計製図の試験は、1課題について設計図書を作成する形式で実施されます。試験時間は6時間30分です。令和8年からは、設計製図の試験でも条件を満たした法令集の使用が認められる予定です。
学科の試験は、四肢択一式で125問出題されます。内訳は、建築計画20問、建築環境・設備20問、建築法規30問、建築構造30問、建築施工25問です。
合格基準
設計製図の試験は、採点結果がランクⅠの場合に合格となります。ランクⅡ、ランクⅢ、ランクⅣは不合格です。設計条件や要求図書に重大な不適合がある場合は、ランクⅣとなることがあります。
学科の試験は、総得点と科目ごとの基準点を満たす必要があります。基準点は試験回ごとに決定され、総得点が基準に達していても、いずれかの科目で基準点を下回ると合格できません。
一級建築士試験の受験者数・合格率
学科試験
| 年度 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
|---|---|---|---|
| 令和7年 | 27,489人 | 4,529人 | 16.5% |
| 令和6年 | 28,067人 | 6,531人 | 23.3% |
| 令和5年 | 28,118人 | 4,562人 | 16.2% |
| 令和4年 | 30,007人 | 6,289人 | 21.0% |
| 令和3年 | 31,696人 | 4,832人 | 15.2% |
設計製図試験
| 年度 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
|---|---|---|---|
| 令和7年 | 11,381人 | 3,988人 | 35.0% |
| 令和6年 | 11,306人 | 3,010人 | 26.6% |
| 令和5年 | 10,238人 | 3,401人 | 33.2% |
| 令和4年 | 10,509人 | 3,473人 | 33.0% |
| 令和3年 | 10,499人 | 3,765人 | 35.9% |
総合合格率
| 年度 | 総合合格率 |
|---|---|
| 令和7年 | 11.4% |
| 令和6年 | 8.8% |
| 令和5年 | 9.9% |
| 令和4年 | 9.9% |
| 令和3年 | 9.9% |
一級建築士試験の難易度
一級建築士試験は、建築系資格の中でもかなり難しい試験です。学科試験と設計製図試験の両方を突破する必要があり、知識量だけでなく、限られた時間内に設計条件を読み取り、図面としてまとめる実践的な力まで求められます。
難しさの大きな理由は、学科試験の出題範囲が非常に広いことです。計画、環境・設備、法規、構造、施工の各分野から出題されるため、得意分野だけで点数を稼ぐことは難しく、建築全体をバランスよく学習する必要があります。特に法規や構造は、暗記だけでなく計算力や条文を使いこなす力も必要になるため、苦手にする受験者も少なくありません。
さらに、学科試験に合格しても設計製図試験が残ります。設計製図では、課題文の条件を正確に読み取り、動線、ゾーニング、構造、設備、法規、面積条件などを整理しながら、制限時間内に図面を完成させる必要があります。知識があっても、条件の読み落としや重大な不整合があると合格が難しくなるため、実践練習の量が重要になります。
仕事をしながら受験する人も多く、学習時間の確保も大きな負担になります。学科は長期的な暗記と問題演習、製図は手を動かして課題を解く練習が必要になるため、短期間の詰め込みで対応するのはかなり厳しい試験です。令和7年試験では総合合格率が11.4%で、学科試験の合格率は16.5%、設計製図試験の合格率は35.0%でした。
建築系の学習経験や実務経験がある人でも、計画的に対策しなければ合格は簡単ではありません。一方で、出題範囲や評価の方向性は比較的明確なため、学科では基礎知識と過去問演習を積み重ね、製図では条件整理と図面作成の訓練を継続できれば、着実に合格に近づける試験です。
一級建築士試験の勉強法
学科は計画、環境・設備、法規、構造、施工の5科目が出題されるため、まずは各科目の基礎を固め、過去問演習を中心に学習を進めましょう。
学科対策では、過去問を繰り返し解くことが非常に重要です。特に法規は法令集を使いこなす力が得点に直結するため、早い段階から線引きやインデックス整理を行い、必要な条文を素早く引けるように練習しておくとよいでしょう。
構造や環境・設備は、計算問題や仕組みの理解が必要になる分野です。単なる暗記だけでは対応しにくいため、公式や考え方を整理しながら、問題演習を通じて解き方を身につけることが大切です。施工は用語や工法、管理方法などを幅広く覚える必要があります。
設計製図試験では、課題文を正確に読み取り、条件に合ったプランを時間内にまとめる力が求められます。エスキス、ゾーニング、動線計画、構造計画、設備計画、作図スピードを意識し、実際に手を動かして繰り返し練習しましょう。
独学で合格を目指すことも不可能ではありませんが、範囲が広く、製図対策は自己判断が難しいため、資格学校や通信講座を利用する人も多い試験です。基本的には、学科は過去問を徹底的に反復し、製図は添削を受けながら課題を繰り返す勉強法がおすすめです。
資格を活かせる仕事
建築設計事務所、ゼネコン、ハウスメーカー、工務店、デベロッパー、不動産会社、建設コンサルタント、官公庁・自治体の建築職、リフォーム会社、確認検査機関、建築設備・構造関連の設計会社などがあります。特に、建築設計、工事監理、建築確認、施工管理、都市開発、公共建築の計画などに関わる仕事では、資格を直接活かしやすいでしょう。
一級建築士は、建築系資格の中でも非常に評価が高く、就職・転職でも強い武器になります。建築設計や工事監理の分野では資格が必要になる業務も多く、設計事務所や建設会社では、資格の有無が担当できる仕事や昇進、資格手当に関わることもあります。
また、実務経験を積めば独立して建築士事務所を開くことも可能です。住宅設計、店舗設計、リノベーション、公共建築、耐震診断、建築コンサルティングなど、専門分野を持つことで仕事の幅を広げることができます。
一方で、一級建築士試験に合格しただけで、すぐに高収入や希望の職場が保証されるわけではありません。実務では、設計力、法規への理解、CAD・BIMスキル、施主との打ち合わせ、施工現場との調整、構造・設備への理解、プレゼン力なども求められます。
一級建築士試験は難易度が高い資格ですが、建築業界で長く働くなら取得する価値は非常に高いです。設計職、施工管理、建築行政、デベロッパー、独立開業など、建築分野でキャリアアップを目指す人にとって、大きな強みになる資格といえるでしょう。

