歯科医師国家試験とは
歯科医師として働くために必要な国家資格を取得するための試験です。歯学部で所定の課程を修了した人などを対象に、歯科医師として必要な基礎医学、歯科医学、診療能力、医療倫理、公衆衛生などの知識が問われます。
試験では、口腔外科、保存修復、歯周病、補綴、小児歯科、矯正歯科、予防歯科、歯科放射線、全身管理など、歯科医療に関する幅広い内容が出題されます。単に歯や口腔の知識だけでなく、全身の健康状態を踏まえた診療判断や、患者への安全な対応も重視されます。
合格後は歯科医師免許の申請を行い、歯科医師として登録されます。その後、臨床研修を経て、歯科医院、病院歯科、大学、研究機関、行政、企業などで働くことができます。口腔の健康を支える専門職として、高い知識と責任が求められる資格です。
歯科医師国家試験の基本情報
| 資格種別 | 国家資格(業務独占資格) |
| ジャンル | 医療・心理 |
| 資格区分 | なし |
| 受験資格 | 大学で歯学の正規課程を修めて卒業した者、卒業見込みの者、歯科医師国家試験予備試験に合格後、1年以上の診療・口腔衛生に関する実地修練を終えた者、外国の歯科医学校卒業者または外国歯科医師免許取得者で厚生労働大臣の認定を受けた者など |
| 試験日程 | 年1回。例年1月下旬から2月上旬ごろに2日間実施 |
| 試験方法 | 筆記資格(択一式、複択式) |
| 免除科目 | なし |
| 試験場所 | 北海道、宮城県、東京都、新潟県、愛知県、大阪府、広島県、福岡県など |
| 受験料 | 18,900円 |
| 登録・更新 | 合格後、歯科医籍登録を行うことで歯科医師免許を取得。歯科医師免許自体に定期更新制度はありません |
| 問い合わせ | 管轄する地方厚生局又は地方厚生支局所在地 |
| 関連資格 | 歯科医師国家試験予備試験 歯科衛生士 歯科技工士 医師 |
歯科医師国家試験の試験日
2026年度試験
| 試験日 | 申込期間 | 合格発表 |
|---|---|---|
| 1月31日・2月1日 | 11月4日~11月28日 | 3月16日 |
歯科医師国家試験の試験内容
歯科医師として診療を行うために必要な知識・技能・態度を確認する国家試験です。試験は2日間で実施され、必修問題、総論、各論を中心に、基礎歯学から臨床歯学、公衆衛生まで幅広く出題されます。
出題範囲
必修問題では、歯科医師として必ず身につけておくべき基本的事項が問われます。医療安全、感染対策、患者対応、基本的な診察・診断、救急対応、倫理、公衆衛生など、臨床に出る前に必要な基礎的能力が中心です。
総論では、人体の構造と機能、病態、診断、治療、予防、歯科保健医療、社会歯科学など、歯科診療全体に共通する知識が出題されます。
各論では、保存修復、歯内療法、歯周病、補綴、口腔外科、小児歯科、矯正歯科、高齢者歯科、障害者歯科、画像診断、麻酔、摂食嚥下、口腔衛生など、各分野の疾患・診療・処置に関する知識が問われます。
試験科目と出題数
歯科医師国家試験は、必修問題、一般問題、臨床実地問題で構成されます。第118回では、必修問題80問、一般問題180問、臨床実地問題100問の合計360問が出題されました。一般問題は1問1点、臨床実地問題は1問3点として扱われます。
合格基準
合格には、必修問題、領域A、領域Bのすべてで基準を満たす必要があります。第118回歯科医師国家試験では、領域Aが58点以上/97点、領域Bが236点以上/363点、必修問題が64点以上/80点とされました。
必修問題はおおむね8割以上が必要で、領域A・領域Bは年度ごとの得点状況により合格基準が示されます。総合点だけでなく、必修問題や各領域で基準を下回ると不合格になる点が特徴です。
歯科医師国家試験の受験者数・合格率
| 年度 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
|---|---|---|---|
| 2026年 | 2,837人 | 1,757人 | 61.9% |
| 2025年 | 3,039人 | 2,136人 | 70.3% |
| 2024年 | 3,117人 | 2,060人 | 66.1% |
| 2023年 | 3,157人 | 2,006人 | 63.5% |
| 2022年 | 3,198人 | 1,969人 | 61.6% |
歯科医師国家試験の難易度
歯科系資格の中でも学習量が非常に多い試験です。歯学部で6年間学んだ人が受験する試験であり、受験者の前提知識が高いことを考えると、合格率だけで簡単とは判断できません。
この試験では、歯科医学の基礎から臨床まで幅広く問われます。解剖学、生理学、病理学、薬理学、微生物学などの基礎系科目に加えて、保存修復、歯内療法、歯周病、補綴、口腔外科、小児歯科、矯正歯科、予防歯科、高齢者歯科、歯科放射線、麻酔、衛生・公衆衛生など、多くの分野を横断して理解する必要があります。
特に難しいのは、知識を単独で覚えるだけではなく、症例をもとに診断や治療方針を判断する力が求められる点です。口腔内写真、エックス線画像、検査所見、患者の年齢や全身状態などを読み取り、どの処置が適切かを考える問題も出題されます。知識が断片的なままだと、似た症例や治療選択で迷いやすくなります。
また、必修問題や禁忌肢の存在も大きな負担になります。基本的な歯科医療の知識、医療安全、感染対策、倫理、患者対応などで大きく崩れると合格が難しくなるため、専門知識だけでなく、歯科医師として避けるべき判断を理解していることも重要です。
歯学部での学習を積み重ねてきた人にとっては十分に合格を目指せる試験ですが、範囲の広さ、臨床判断、画像読影、必修・禁忌肢への対応を考えると、一般的な資格試験と比べて取得までのハードルはかなり高い資格です。
資格を活かせる仕事
歯科医院、大学病院、総合病院の歯科・口腔外科、矯正歯科医院、小児歯科、訪問歯科、保健所、行政機関、研究機関、歯科関連企業などがあります。特に、歯や口腔内の診察、診断、治療、予防指導、口腔機能の維持・改善に関わる仕事では、歯科医師免許が直接必要になります。
歯科医師は、一般歯科だけでなく、矯正、口腔外科、審美歯科、インプラント、予防歯科、高齢者向けの訪問歯科など、専門分野によって働き方が変わります。地域の歯科医院で診療を行うほか、病院で口腔外科に携わったり、大学や研究機関で教育・研究に関わったりする道もあります。
就職・転職においては非常に実用性の高い資格ですが、歯科医師国家試験に合格しただけで安定した高収入や開業成功が保証されるわけではありません。実務では、治療技術、患者対応、説明力、診療方針、衛生管理、スタッフとの連携なども重要になります。開業を目指す場合は、経営力や集患、設備投資、地域での信頼づくりも必要です。
歯科医師国家試験は、歯科医療の専門職として働くための入口となる試験です。取得までの負担は大きいですが、歯科医師として患者の口腔の健康を支えたい人にとって、最も重要な資格といえるでしょう。

