コンクリート診断士試験とは
既存のコンクリート構造物を調査・診断し、維持管理や補修・補強に関する判断を行う技術者を認定する民間資格です。橋梁、トンネル、建築物、土木構造物など、コンクリート構造物の劣化状況を把握し、適切な対策につなげるための専門知識が問われます。
資格を取得するには、コンクリート診断士講習を受講したうえで、筆記試験に合格する必要があります。試験では、コンクリートの材料・施工、劣化機構、調査方法、診断、補修・補強、維持管理など、コンクリート構造物を長く安全に使うために必要な内容が出題されます。
建設会社、土木会社、建築会社、建設コンサルタント、調査診断会社、補修・補強工事会社、官公庁などで活用しやすい資格です。法令上の独占業務がある資格ではありませんが、コンクリート構造物の点検・診断・維持管理に関わる仕事では専門性を示しやすく、インフラメンテナンス分野で役立つ資格といえます。
コンクリート診断士の基本情報
| 資格種別 | 民間資格 |
|---|---|
| ジャンル | 建築・不動産 |
| 資格区分 | なし |
| 受験資格 | コンクリート主任技士、コンクリート技士、一級建築士、技術士、1級土木施工管理技士、1級建築施工管理技士などの登録資格を持つ人、またはコンクリート技術に関する学歴と実務経験を満たす人。あわせて、指定年度のコンクリート診断士講習を修了していることが必要 |
| 試験日程 | 年1回。例年7月ごろに実施 |
| 試験方法 | 筆記試験。四肢択一式と記述式で実施 |
| 免除科目 | 前年度の講習修了者は、講習受講が免除される場合があります。試験科目そのものの免除制度は特に案内されていません |
| 試験場所 | 札幌、仙台、東京、名古屋、大阪、広島、高松、福岡、沖縄の指定試験地 |
| 受験料 | 日本コンクリート工学会会員:15,400円(税込)/一般:16,170円(税込) |
| 登録・更新 | 試験に合格し、登録手続きを行うことでコンクリート診断士として登録されます。登録後は更新制度があり、更新登録のための研修受講が必要 |
| 問い合わせ | 公益社団法人 日本コンクリート工学会 |
| 関連資格 | コンクリート技士 不動産コンサルティング技能試験 二級建築士 建築設備士 |
コンクリート診断士の試験日
2026年度試験
| 試験日 | 申込期間 | 合格発表 |
|---|---|---|
| 7月26日 | 4月15日~5月21日 | 9月末日予定 |
コンクリート診断士の試験内容
四肢択一式問題と記述式問題で構成されています。コンクリート構造物の劣化、調査、診断、評価、補修・補強、維持管理に関する知識が問われます。
四肢択一式問題では、コンクリートの変状、劣化機構、調査方法、判定基準、補修・補強工法、関連基準などを幅広く確認します。記述式問題では、劣化状況や調査結果を踏まえ、診断結果や対策を文章で説明する力が必要です。
出題範囲
記述式問題
コンクリート構造物の変状、劣化原因、調査結果、診断、補修・補強方針などについて、文章で整理する内容です。
単に知識を並べるのではなく、構造物の状態を読み取り、劣化の原因を推定し、適切な調査・評価・対策を筋道立てて説明する力が問われます。
変状の種類と原因
ひび割れ、浮き、剥離、漏水、鉄筋腐食、変色、摩耗、凍害、化学的劣化など、コンクリート構造物に生じる変状が出題されます。
変状の見た目だけでなく、施工不良、材料、環境条件、荷重、経年劣化など、発生原因を結びつけて理解しておく必要があります。
劣化の機構
中性化、塩害、アルカリシリカ反応、凍害、化学的侵食、疲労、摩耗などが問われます。
それぞれの劣化がどのような条件で進行し、コンクリートや鉄筋にどのような影響を与えるのかを整理しておくことが大切です。
調査手法
目視調査、打音調査、ひび割れ調査、反発度法、超音波法、コア採取、圧縮強度試験、中性化深さ試験、塩化物イオン量試験、鉄筋探査などが出題されます。
調査方法ごとの目的、特徴、適用場面、注意点を理解し、構造物の状態に応じて適切な調査を選ぶ力が必要です。
劣化予測・評価・判定
調査結果をもとに、劣化の進行状況、構造物の健全性、耐久性、安全性を評価する内容です。
劣化予測では、環境条件や劣化機構を踏まえ、今後の進行を見通す考え方が問われます。評価・判定では、調査結果を基準類や劣化状態と照らし合わせ、補修・補強の必要性を判断する力が必要です。
補修・補強工法
ひび割れ注入工法、断面修復工法、表面被覆工法、表面含浸工法、電気防食工法、脱塩工法、再アルカリ化工法、炭素繊維補強、外ケーブル補強などが出題されます。
劣化原因や構造物の状態に応じて、適切な補修・補強工法を選定できるようにしておく必要があります。
技術・基準類
コンクリート標準示方書、建築工事標準仕様書、JIS、維持管理に関する基準類、技術の変遷などが問われます。
基準類の細部を暗記するだけでなく、診断や補修・補強の考え方にどう関係するかを理解しておくことが大切です。
試験科目と出題数
試験は、四肢択一式問題と記述式問題で実施されます。試験時間は3時間です。
四肢択一式問題は40問程度が出題されます。記述式問題は、複数の設問から1題を選択し、1,000字以内で解答する形式です。
合格基準
四肢択一式問題と記述式問題のそれぞれで、基準点を超える必要があります。
固定の合格点が明示されている形式ではなく、試験回ごとの結果をもとに判定されます。四肢択一式で知識を正確に押さえたうえで、記述式では調査、診断、評価、対策を論理的に説明できることが重要です。
コンクリート診断士の受験者数・合格率
| 年度 | 申込者数 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
|---|---|---|---|---|
| 2025年度 | 3,835人 | 3,030人 | 537人 | 17.7% |
| 2024年度 | 4,044人 | 3,217人 | 536人 | 16.7% |
| 2023年度 | 4,395人 | 3,412人 | 535人 | 15.7% |
| 2022年度 | 4,601人 | 3,474人 | 557人 | 16.0% |
| 2021年度 | 4,935人 | 3,611人 | 576人 | 16.0% |
コンクリート診断士の難易度
コンクリート診断士試験は、コンクリート構造物の調査・診断・補修に関わった経験がある人でも、しっかり対策が必要な試験です。材料や施工の知識だけでなく、劣化原因を見極め、適切な診断や補修方法を判断する力が求められるため、実務経験と理論の両方が重要になります。
難しさの理由は、コンクリートの劣化や損傷に関する知識を幅広く理解する必要があるためです。ひび割れ、中性化、塩害、凍害、アルカリシリカ反応、化学的侵食、鉄筋腐食など、劣化現象ごとの原因や進行の仕組みを整理しておく必要があります。単に症状名を覚えるだけではなく、なぜその劣化が起こるのか、どのような環境で進行しやすいのかまで理解することが大切です。
また、調査方法や診断結果の読み取りも重要です。外観調査、打音調査、コア採取、圧縮強度試験、中性化深さ試験、塩化物イオン量試験、非破壊検査など、調査手法ごとの特徴や使い分けを理解する必要があります。実務で一部の調査に関わっている人でも、試験では幅広い方法について問われるため、未経験の手法は重点的に確認しておく必要があります。
記述式の対策も負担になりやすい部分です。劣化状況をどう判断するか、どのような補修・補強方法が適切かを、根拠を示しながら説明する力が求められます。知識を持っていても、文章で分かりやすく整理できないと得点につながりにくいため、過去問を使って答案の組み立て方に慣れておくことが重要です。
土木・建築の施工管理、コンクリート構造物の維持管理、調査診断、補修設計などに関わっている人は、実務と結びつけながら学習しやすい資格です。一方で、コンクリートの劣化診断に直接関わった経験が少ない人は、材料・劣化機構・調査方法・補修工法を体系的に整理する必要があります。
コンクリート診断士の勉強法
ひび割れ、中性化、塩害、凍害、アルカリシリカ反応、化学的侵食、疲労など、劣化原因ごとの特徴を押さえることが重要です。単に名称を覚えるだけでなく、どのような環境で発生し、どのような症状が出るのかを関連づけて理解すると覚えやすくなります。
調査・診断分野では、目視調査、打音調査、コア採取、圧縮強度試験、中性化深さ試験、塩化物イオン量測定、鉄筋探査などの方法を整理しておきましょう。どの劣化に対してどの調査方法を使うのか、結果をどう評価するのかを意識して学ぶことが大切です。
記述式問題では、劣化原因の推定、調査計画、補修・補強方法、維持管理方針などを筋道立てて説明する力が必要になります。過去問や演習問題を使い、単語だけで答えるのではなく、原因・根拠・対策をセットで書く練習をしておきましょう。
コンクリート診断士試験は、実務経験がある方でも診断・維持管理の視点で知識を整理する必要があります。基本的には、テキストで劣化機構と調査方法を押さえ、過去問で出題傾向に慣れ、記述式では診断から対策まで説明できるように練習する勉強法がおすすめです。
資格を活かせる仕事
建設会社、土木工事会社、建設コンサルタント、構造物調査会社、補修・補強工事会社、ゼネコン、自治体やインフラ管理部門、マンション大規模修繕に関わる会社などがあります。特に、ひび割れ、剥離、鉄筋腐食、中性化、塩害、凍害、アルカリシリカ反応などの劣化原因を調査し、補修方法を検討する仕事では、資格で学んだ知識を活かしやすいでしょう。
コンクリート構造物は、建設して終わりではなく、長期間にわたって点検・診断・補修を行いながら維持していく必要があります。老朽化したインフラや建築物が増えている中で、劣化の状態を正しく判断できる人材は、土木・建築・維持管理の分野で重要性が高まっています。
この資格は、コンクリート関連の実務経験がある人にとっては専門性を示しやすい資格です。コンクリート技士・主任技士が製造や施工、品質管理寄りの資格であるのに対し、コンクリート診断士は既存構造物の調査・診断・維持管理に強みがあります。
一方で、コンクリート診断士だけで就職・転職が大きく有利になるというよりは、土木・建築・構造物調査・補修工事などの実務経験と組み合わせて活かす資格です。土木施工管理技士、建築施工管理技士、技術士、コンクリート技士、建築士などと組み合わせることで、インフラ維持管理や補修・補強分野でより評価されやすくなるでしょう。

