海事代理士試験とは
船舶登記、船舶登録、船員関係の手続き、海運・港湾・造船など、海事に関する行政手続きの書類作成や申請代理を行う専門職を目指すための国家試験です。一般には「海の法律家」と呼ばれることもあり、船舶や海運業に関わる法的手続きを支える役割を担います。
試験は筆記試験と口述試験で実施されます。受験資格に制限はないため誰でも受験できますが、海事代理士として業務を行うには、試験合格後に海事代理士として登録する必要があります。
海事代理士は業務独占資格にあたるため、船舶や海事関係の手続きを仕事として扱いたい人にとって重要な資格です。海運会社、造船・船舶関連企業、行政手続きに関わる仕事、海事法務に関心がある人に向いている資格といえるでしょう。
海事代理士試験の基本情報
| 資格種別 | 国家資格(業務独占資格) |
|---|---|
| ジャンル | 車・船・航空 |
| 資格区分 | なし |
| 受験資格 | 制限なし。ただし欠格事由に該当する場合は登録不可 |
| 試験日程 | 年1回、筆記試験は例年9月頃、口述試験は例年11月頃 |
| 試験方法 | 筆記試験・口述試験。筆記は法令科目中心、口述は海事法令に関する口頭試問 |
| 免除科目 | 前年の筆記試験合格者は、申請により筆記試験免除あり |
| 試験場所 | 筆記は全国の地方運輸局など、口述は国土交通省本省 |
| 受験料 | 6,800円 |
| 登録・更新 | 合格後、海事代理士名簿への登録で業務可能。更新制度なし |
| 問い合わせ | 海事局海事人材政策課海事振興企画室 |
| 関連資格 | 水先人 救命艇手 海事補佐人 船の文化検定 |
海事代理士試験の試験日
2025年度試験
| 試験日 | 申込期間 | 合格発表 |
|---|---|---|
| 筆記:9月25日(木) 口述:11月25日(火) | 8月1日~8月31日 | 筆記:10月30日 最終:口述試験終了後20日以内 |
海事代理士試験の試験内容
筆記試験と口述試験で構成されています。筆記試験では、一般法律常識と海事法令が出題されます。口述試験は、筆記試験合格者と、前年の筆記試験合格者で筆記試験免除申請をした人を対象に実施されます。
筆記試験は20科目、口述試験は4科目です。筆記では海事関係法令を幅広く確認し、口述では船舶法、船舶安全法、船員法、船舶職員及び小型船舶操縦者法について、口頭で答える力が問われます。
出題範囲
口述試験
船舶法、船舶安全法、船員法、船舶職員及び小型船舶操縦者法が出題されます。
船舶法では、日本船舶、船舶国籍証書、登録、検認、変更手続などを理解しておく必要があります。船舶安全法では、船舶検査、船舶検査証書、安全設備、航行上の安全に関する制度が中心です。
船員法では、船員の労働条件、雇入契約、労働時間、休日、船長や船員の義務などが問われます。船舶職員及び小型船舶操縦者法では、海技免許、小型船舶操縦免許、乗組み基準、免許や資格に関する手続を整理しておく必要があります。
筆記試験
一般法律常識では、憲法、民法、商法が出題されます。商法は第3編「海商」が対象です。
海事法令では、国土交通省設置法、船舶法、船舶安全法、船舶のトン数の測度に関する法律、船員法、船員職業安定法、船舶職員及び小型船舶操縦者法、海上運送法、港湾運送事業法、内航海運業法、港則法、海上交通安全法、造船法、海洋汚染等及び海上災害の防止に関する法律、国際航海船舶及び国際港湾施設の保安の確保等に関する法律、領海等における外国船舶の航行に関する法律、船舶の再資源化解体の適正な実施に関する法律などが出題されます。
試験科目と出題数
筆記試験は20科目で実施され、総得点は240点満点です。一般法律常識と海事法令に分かれ、海事代理士業務に必要な法律知識を幅広く確認する内容です。
口述試験は4科目で実施されます。対象科目は、船舶法、船舶安全法、船員法、船舶職員及び小型船舶操縦者法です。総得点は40点満点です。
合格基準
筆記試験は、20科目の総得点240点の60%以上が基準です。ただし、全科目受験者の平均正答率が60%を上回る場合は、平均正答率以上の得点が必要になります。
口述試験は、4科目の総得点40点の60%以上が合格基準です。筆記試験・口述試験ともに、対象となる全科目を受験した人について合否判定が行われます。
海事代理士試験の受験者数・合格率
令和7年試験
| 試験区分 | 出願者数・受験資格者数 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
|---|---|---|---|---|
| 筆記試験 | 565人 | 435人 | 230人 | 52.9% |
| 口述試験 | 239人 | 233人 | 219人 | 94.0% |
令和6年試験
| 試験区分 | 出願者数・受験資格者数 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
|---|---|---|---|---|
| 筆記試験 | 578人 | 441人 | 229人 | 51.9% |
| 口述試験 | 242人 | 235人 | 229人 | 97.5% |
令和5年試験
| 試験区分 | 出願者数・受験資格者数 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
|---|---|---|---|---|
| 筆記試験 | 528人 | 409人 | 228人 | 55.7% |
| 口述試験 | 237人 | 235人 | 223人 | 94.9% |
令和4年試験
| 試験区分 | 出願者数・受験資格者数 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
|---|---|---|---|---|
| 筆記試験 | 490人 | 361人 | 199人 | 55.1% |
| 口述試験 | 208人 | 197人 | 194人 | 98.5% |
令和3年試験
| 試験区分 | 出願者数・受験資格者数 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
|---|---|---|---|---|
| 筆記試験 | 410人 | 302人 | 167人 | 55.3% |
| 口述試験 | 220人 | 212人 | 209人 | 98.6% |
海事代理士試験の難易度
合格率だけを見ると極端に難しい試験には見えないかもしれませんが、海事代理士試験は船舶や海運に関する法律を幅広く扱うため、初学者にとっては専門用語や制度の理解で苦戦しやすい試験です。一般的な法律資格とは異なり、海事分野に特化した知識が必要になる点が大きな特徴です。
特に、海事関係の仕事に携わっていない人にとっては、船舶、船員、港湾、海上運送などに関する法律のイメージがつかみにくく、最初はかなり取っつきにくいでしょう。法律の学習経験がある人でも、海事分野独自の用語や手続きに慣れるまでは時間がかかります。
一方で、司法試験や司法書士試験のような最難関法律資格と比べると、難易度はやや抑えられます。出題範囲を整理し、過去問を中心に繰り返し対策すれば、独学でも合格を目指すことは可能です。
また、筆記試験だけでなく口述試験もあるため、知識を覚えるだけでなく、問われた内容に対して落ち着いて答える力も必要になります。筆記で身につけた知識を自分の言葉で説明できるようにしておくことが大切です。
総合的に見ると、海事代理士試験は難関資格というほどではありませんが、海事法令に特化した専門性の高い国家資格です。法律初学者や海事業界の経験がない人にとっては、合格率の印象以上に難しく感じやすいため、計画的な対策が必要な試験といえるでしょう。
海事代理士試験の勉強法
過去問を中心に進めるのがおすすめです。海事代理士試験は科目数が多いため、最初から全法令を細かく読み込むよりも、過去問でよく問われる条文や制度を把握し、必要な部分をテキストや法令集で確認する方が効率的です。
筆記試験では、船舶法、船員法、海上運送法、港湾運送事業法、船舶安全法など、海事関係の法令が多く出題されます。似たような用語や手続きも多いため、各法律の目的、届出・登録・許可の違い、期限、罰則などを整理しながら覚えることが大切です。
口述試験では、筆記で学んだ知識を口頭で説明できる力が必要になります。口述試験は4科目で、総得点40点の60%以上が合格基準です。過去の口述試験問題と模範解答も公開されているため、声に出して答える練習をしておくとよいでしょう。
独学でも合格を目指せますが、試験範囲が広く、対策情報も行政書士などに比べると少なめです。基本的には、過去問を繰り返し解き、出題頻度の高い法令から優先して覚え、口述対策では想定問答を声に出して練習する勉強法がおすすめです。
海事代理士試験のテキスト
海事代理士合格マニュアル
海事代理士試験の全体像をつかむための基本教材として使いやすいテキストです。筆記試験は科目数が多いため、まず各法令の重要ポイントを整理し、出題されやすい部分を押さえる学習が向いています。過去問演習に入る前の土台作りにおすすめです。
海事代理士合格六法
海事代理士試験では、海事法令の条文確認が欠かせません。合格六法は、試験で必要になる法令をまとめて確認しやすい教材です。テキストや過去問で分からない部分を条文に戻って確認することで、筆記試験・口述試験の両方に対応しやすくなります。
海事代理士厳選過去問題集
海事代理士試験は、過去問演習で出題傾向をつかむことが重要です。厳選過去問題集を使えば、頻出論点を問題形式で確認でき、知識の定着にも役立ちます。筆記試験対策では、テキスト学習後に繰り返し解く教材として使いやすいです。
資格を活かせる仕事
船舶や海運に関する各種手続きを代理・代行するための国家資格です。船舶の登記・登録、船員に関する手続き、海上運送事業、造船、港湾関係など、海事分野に特化した法律・行政手続きの知識を活かすことができます。
活かしやすい仕事としては、海事代理士事務所、海運会社、船舶会社、造船会社、港湾関連企業、マリーナ、漁業関係、船舶管理会社、行政書士事務所、海事関連のコンサルティング業務などがあります。特に、船舶の登録や検査、船員関係の届出、海運事業に関する許認可手続きなどに関わる仕事では、資格で学んだ知識を活かしやすいでしょう。
海事代理士は、海事分野に特化した専門資格であり、一般的な法律系資格とは違って活躍できる業界がかなり限定されます。その分、船舶・海運・港湾関係の仕事に携わる人にとっては、実務と結びつきやすい資格です。
一方で、海事代理士試験に合格しただけで、すぐに安定した収入や独立開業につながるとは限りません。海事関連の手続きは専門性が高い反面、依頼件数や顧客層が限られるため、実務経験や業界とのつながり、人脈も重要になります。
また、行政書士や司法書士などの資格と組み合わせることで、扱える業務の幅を広げやすくなります。海事代理士試験は、海運・船舶・港湾関連の仕事に関わりたい人や、海事分野で専門性を高めたい人にとって、取得を検討する価値のある資格といえるでしょう。
受験者の口コミ評判
侮れない
4.0 さとし 30代会社員
士業にしては合格率40%前後で難易度低めに見えるが、実際はかなり難易度が高く、法律初学者にはかなり苦戦を強いられます。
平日の試験日のこともあり記念受験者がほとんどおらず、法律職の他士業保持者や船舶関連業種の受験者ばかりです。肝は二次試験の口述ですが、合格率に騙されてなめてかかると意外に落とされます。
参考までに、資格マニアの東大卒の方でも一発合格を果たせておりません。私は行政書士は一発合格でしたが、この資格は4回目でようやく合格を手にすることが出来ました。つまり受験者のレベルが高いがゆえの合格率ですので、侮れません。(2019年5月)
ほぼ完全独立開業型資格
3.0 やば 30代会社員
海事代理士は、合格率ですと40%以上となっています。よく1ヶ月とか2週間で合格というのを見かけますがこの合格率には、カラクリがあり
試験が筆記と口述共に平日にあり口述試験は東京でしか行われない事受験してるのが、行政書士や司法書士などであることから受験レベルが高い事が一つです。
法律初学者であれば、それなりの時間が必要となります。憲法や民法は条文と簡単な判例問題も出ますし海事法令については、とにかく聞きなれない用語を過去問で丸暗記という地味な学習方法となります。
一番は、口述試験です。筆記試験と違いその場で答えられなくてはならず思った以上に難しいです。難易度は、難関資格ではないものの面倒くさく思ったほど簡単ではなかったというのが本音です。
海事代理士は、ほぼ完全独立開業型資格です。自分は、行政書士を取得するということでセット受験しました。そういう意味では、趣味、自己啓発感覚で受ける人はほとんどいないのではないかと思います。(2016年2月)


侮れない
ほぼ完全独立開業型資格